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奈良地方裁判所 昭和29年(行)8号 判決 1957年4月16日

原告 長谷川清策

被告 奈良県知事

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告が原告に対し別紙目録記載の農地(一)について昭和二十三年十二月二日を買収期日としてなした買収処分及び右目録記載の農地(二)について昭和二十四年七月二日を買収期日としてなした買収処分はいずれも無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めその請求の原因として、「別紙目録記載の農地(一)(二)(以下本件農地(一)(二)と云う)はもと訴外西川林之助の所有であつたが、原告は同訴外人より昭和二十一年七月二十三日これを買受け同年十一月十三日その所有権移転登記を受けて所有していたところ、被告奈良県知事は訴外磐城村農地委員会が本件農地(一)につき、昭和二十三年十月十一日に又本件農地(二)につき昭和二十四年五月十四日に各樹立した買収計画に基いて夫々昭和二十三年十二月二日及び昭和二十四年七月二日に自作農創設特別措置法(以下自創法と云う)第三条の規定により買収処分をした。しかしながら、右各買収処分は左の理由で無効である。即ち(一)原告は終始現住所にあつて、耕作の業務を営み右買収処分があつた当時は居村内で自作地田一町一反六畝十一歩と小作地田六反三畝九歩とを所有するだけであるから、強いて買収されるとしてもその部分は、奈良県における法定小作地保有面積六反歩を超過する右小作地の三畝九歩にすぎない。しかるに当該磐城村農地委員会は、原告所有の本件農地(一)(二)合計一反九畝十六歩につき前叙のような買収処分をしたのであるから、その違法なこと勿論である。(二)又磐城村農地委員会は前記買収計画につき自創法第六条第五項に基く公告をしなかつた。被告は右買収計画の公告をした旨主張するが右公告はその要件である記載を欠くものであるから適法な公告があつたと謂うことができない。(三)又被告は買収令書を原告に交付し又は交付に代る公告をした事実もない。尤も被告は原告は買収令書の受領を拒んだから之に代る公告をした旨主張するがその県報の公示なるものは、既に買収令書の交付があつたことを前提とし、ただそれの受領証提出の遅滞のあつたものに対するものであるから、これによつて直ちに買収令書の交付があつたとは云えない。一方原告は右農地の対価を受領したこともないのであつて、被告が前記買収処分をした事実は昭和二十九年八月に至り、漸く聞知したにすぎない。以上のように前記買収処分は違法でありその違法たるや重大且つ明白であるから、当然無効のものといわざるを得ない。よつて原告は前記買収処分の無効確認を求むるため本訴請求に及んだ次第である」と述べ、なお被告の主張に対し「被告は原告が本訴において奈良県知事を被告として本件買収処分の無効確認を求めているのは、被告を誤つたものである旨主張するが、本訴は被告奈良県知事が国の機関としてなした自創法所定の農地買収処分の無効確認を求めるのであるから、行政事件訴訟特例法第三条に謂う「処分をした行政庁」を被告としたものであつて、固より適法である。又被告は原告が本件農地の正当なる所有者でないから確認の利益を有しないと主張するが、原告は訴外西川林之助より自ら耕作することを目的として買受けたものであるから昭和二十年十二月二十九日法律第六十四号農地調整法第六条第三号の規定により地方長官たる奈良県知事の認可なくして有効に所有権を取得することができたのである。被告は本件農地が原告の製材工場の前にあるため原告名義にすべく意図した旨言われるが、原告としては単なる名義上の取得を意図する筈はない。本件農地は原告の軒下に存在するため名実共にこれの所有権を取得しこれによつて、自ら耕作して小作人よりも農業生産力の増進を期せんとしたものである。尤もこの所有権の取得当時、本件農地は被告主張のように訴外庄田喜一郎が小作していた。しかし前叙のように本件農地は同訴外人より原告自ら耕作する方が地理的に便宜であり施肥その他管理上の便益も多く、従つて農産増進の立前から容易に原告の自作が容認せられるものと信じて右農地の所有権を取得したところ、同訴外人は自らの耕作を主張して譲らないので、止むなく同訴外人の小作を尊重し爾後小作料を収めていたものである。そして右所有権取得について被告主張のような村長の虚偽文書を行使したことはない。尚被告は農地調整法第六条第二号の自作農創設維持による所有権移転の証明をとり云々と主張せられるが、右規定は同法第四条第一項の自作農創設維持を指すもので、その主体は都道府県市町村、市町村農業会その他命令で定める団体(同法施行令第二条によつて産業組合、農事実行組合)に限られ、個人たる原告には証明の得ようがない。仮に被告主張のように、原告において本件農地の所有権取得の手続に瑕疵があつたとしても、その取得につき被告が、協力するかのような証明書を交付し、且つ、所有権移転の登記が行われ、更に被告は原告に所有権が存在することを前提として、原告を相手方として本件農地の買収をするに至つた以上原告の前記所有権の取得は当然に無効ではなくただ瑕疵ある法律行為に止まる。従つて原告は本件買収処分について利害関係者でありその効力を争うことができる。又被告は本件買収計画は登記簿上の記載を信頼し原告を所有者として定めただけで、本件買収処分の効力を争うことのできる者は真の所有者である訴外西川林之助であるかの如く主張するけれども果してそうであるならば、本件買収処分は人違いのものであるから、その無効であること論を俟たない。凡そ無効の行政処分に対しては何人からもその無効を主張することができるし登記簿上の所有名義者たる原告としては、本訴を求めるにつき法律上の利益がある。猶被告主張の磐城村大字八川二二六番地、同二三七番地、同二三五番地、同村大字机田二五八番地田合計三反七畝十五歩は本件買収当時すでに同地を小作していた訴外石井末太郎、同大塚繁雄の所有となつていたもので原告の小作地ではなかつた」と述べた。(立証省略)

被告訴訟代理人は訴却下の判決を求め「本訴は行政処分の無効確認を求めるものであるから、被告は処分庁たる奈良県知事ではなく、国であるから原告の本訴は当事者適格を欠く不適法なるものである。仮に右主張が容れられないとしても原告主張のように原告は訴外西川林之助より昭和二十一年七月二十三日本件農地外数筆の土地を買受けたものであるから昭和二十年十二月二十九日法律第六十四号農地調整法第五条の規定によつて、右買受けにつき地方長官の認可を必要とするところ、原告は右認可を得ていないから本件農地の所有者と謂うことができない。尤も同法第六条には右認可を要しない例外的場合が、列挙されているが、前記売買はそのいずれにも該当しない。登記簿の記載によれば右売買は自作農創設のための売買であるとされて居り、もしそうであれば法律第六十四号農地調整法第六条第二号に該当するのであるが、事実は昭和二十一年当時は勿論、現在に至るまで本件土地を訴外庄田喜一郎が原告の前主訴外西川林之助より賃借して耕作しているのであつて、原告は本件農地が自己の製材工場の前にある関係で、どうしても自己名義にしようと意図し、昭和二十一年当時自分が区長をしていることを幸いに、その耕作している他の農地と共に、本件農地を原告が耕作している旨の虚偽の証明書を村長よりもらい、前記農調法第六条第二号所定の自作農維持創設による土地所有権移転である旨の知事の証明をとり、所有権取得登記を完了した。このように、原告は本件農地を自己名義にしたのちも農地調整法第九条の規定によつて、前記訴外庄田との本件農地に対する賃貸借契約を解約して、自ら耕作する等の措置をとらず、政府買収に至るまで同訴外人より年々小作料を受取り何ら明渡の交渉をしなかつた経過よりみれば本件農地の取得は自作農創設のためのものではない。又法律第六十四号農地調整法第六条第三号所定の耕作の目的に供するための農地所有権の取得でもないことは前叙のように、原告が小作料のみを収得していた事情に照し明白なところである。けだし前記農地調整法第六条第三号の規定が権利の取得者において、取得の目的物たる農地を自ら耕作する場合にのみ適用されるべきであることは農地調整法の第一次、第二次の改正案から、自創法の制定へと発展した法制定の経緯に徴しても明らかであつて、すでに取得の目的物たる農地につき賃借権その他の小作権が設定されている場合には譲受人が、その小作人から小作権を取上げうるという条件を具えていなければならないのである。従つて原告は本件農地の所有権を取得したとは到底謂うことができないから原告は本件農地の買収処分の無効を主張してこの効力を争うことはできないのであつて、本訴の原告適格者は訴外西川林之助と謂わなければならない。してみると、原告は本訴を求めるにつき法律上の利益を欠くから、本訴請求は却下されるべきものである」と述べ、

本案につき主文同旨の判決を求め「別紙目録記載の各農地はもと訴外西川林之助が所有し原告が同訴外人より原告主張の日時にこれを買受け、その所有権移転登記をうけたこと、被告は訴外磐城村農地委員会の定めた本件農地(一)(二)の各買収計画に基いて原告主張の日時に、これを買収したこと、又原告が現住居において農業に従事していたことは認めるが、その余を争う。原告は昭和二十年十一月二十三日現在には自作地八反三畝十八歩と小作地三反三畝九歩とを所有しているものとみられていたが、其後昭和二十一年七月二十三日訴外西川林之助より田地を買得したるがため昭和二十二年十月当時自作地一町一反六畝十一歩、小作地六反六畝二十二歩を所有するものとして、昭和二十二年五月十四日農林省告示第七十二号備考一の規定に基き、中央農地委員会によつて承認せられた自創法第三条第一項第二号所定の奈良県における小作地保有面積六反歩を超過する右小作地六畝二十二歩につき買収せらるることとなつた。そこで被告は右前記磐城村農地委員会の樹てた買収計画に基き、先づ昭和二十二年十月二日附で、原告所有の磐城村大字太田方一一九二番地田一畝十三歩、同所一五一七番地田十八歩合計二畝一歩を買収した。ところが、後日原告の自作地とされた前記一町一反六畝十一歩の中磐城村大字八川二二六番地同二三五番地、同二三七番地、同二五八番地の田合計三反七畝十五歩が小作地であることが解つたので、昭和二十三年七月二日附で被告は右同所二三五番地、同二三七番地、同二五八番地の田合計二反六畝二十五歩を買収し、又昭和二十三年十二月二日附で別紙目録記載の農地(一)につき分筆を避けるため、前記農林省告示第七十二号備考二の規定によつてこれを買収した外更に昭和二十四年七月二日附で別紙目録記載の農地(二)を買収したのである。結局原告の所有する小作地一町四畝七歩中合計四反八畝十二歩が買収せられ残余の小作地は五反五畝二十五歩(六反を欠くに至つたのは前述の通り分筆を避くる必要上である)となつたのであるから被告は原告に対し、その法定保有小作地面積を侵害して農地買収処分をしたものではないから、原告の主張はその理由がない。原告は本件農地に対する買収計画には適法な公告を欠き、又その買収令書の交付乃至交付に代る公告もなかつたと主張するが、当該磐城村農地委員会は昭和二十三年十月十一日別紙目録記載の農地(一)の又昭和二十四年五月十四日同農地(二)の各買収計画を定め、前者は昭和二十三年十月十五日より同月二十五日までの期間、後者は昭和二十四年五月十六日より同月二十五日までの期間これを磐城村の事務所の掲示場に掲示して公告したのであつて、被告奈良県知事は、これに基き本件農地の各買収令書を磐城村農地委員会に発送し、同委員会より原告に交付せしめんとしたところ、原告において右令書の受領を拒むので止むを得ず、昭和二十四年六月二日及び昭和二十五年四月二十八日奈良県報号外により交付に代る公告をしたのである。原告は右公告の後旬日を経ないで被告に対し別紙目録記載の農地(一)の買収令書の受領証と対価の委任状を提出して来たので、被告は原告に対し日本勧業銀行奈良支店よりその対価を支払つた。従つて本件農地の各買収手続には何ら違法はない。尚原告はその妹婿たる訴外西川栄一郎が、当該磐城村農地委員会の委員であつた関係上同訴外人より本件農地の買収経過を仔細に聞いて居り、原告はその村会副議長たる地位を利用して、右買収を最少限度に止めるべく終始一貫画策し運動したが、遂に隠しきれず法規通りの買収処分を受けるに至つたのである」と述べた。(立証省略)

理由

先づ被告の本案前の抗弁につき判断するに被告は原告の本訴が農地買収処分の無効確認を求めるものであるから被告を国とすべきものであつて奈良県知事を相手方とした本訴は不適法である旨主張するが、行政処分の無効確認を求める訴は当該行政処分の効果たる権利又は法律関係の帰属する主体である国を被告とするのが本則であるが行政処分の取消又は変更を求める訴と同様に処分庁を被告とすることもできると解すべきである。けだし本来からすれば行政処分の取消又は変更を求める訴であつても国の機関として行政庁が、公権力に基きなした行政処分を争うのであるからその被告は当然その権利主体たる国であるべき筈である。それにも拘らず行政事件訴訟特例法がその第三条において、右訴の被告をその権利主体たる国とせず国の機関として直接行政処分をなした当該行政庁としたのは、その行政処分の瑕疵を主張し取消又は変更を求める国民にとつて便宜であり、又訴訟上被告に十分な攻撃又は防禦の方法を講じさせることができて裁判所も事案の適正なる解決をすることができると考えたために外ならない。そうだとすれば行政処分の無効確認を求める訴においても、その訴の態様が、右取消又は変更を求める訴と同様国の機関として、行政庁が公権力に基きなした行政処分の違法を攻撃するものであるから前記趣旨は準用せられるのが相当である。従つて被告を奈良県知事とする本訴は適法である。又被告は原告が本件農地の正当なる所有者でないから、原告は確認の利益を欠く旨主張するを以て按ずるに原告が訴外西川林之助より原告主張の日時に本件農地を買受け、その所有権移転登記をうけたこと原告が現住居において農業に従事していることは当事者間に争いのないところ成立に争いのない乙第二号証の一と証人長谷川宇三郎、同庄田一夫の各証言によれば、原告は本件農地が現住居の前にあり、耕作に供する便宜からもこれを手に入れたいと考え訴外西川林之助から、買入れたが、本件農地は訴外庄田喜一郎が訴外西川からすでに賃借して耕作して居たため、原告は訴外庄田に引続き耕作せしめ、その小作料を以て原告の訴外西川に対する債務に充当していたことが認められ、又右認定に反する証拠もないから当時施行の昭和二十年十二月二十八日法律第六十四号農地調整法第六条第三号により耕作の目的に供する為め農地の所有権を取得するものであるから原告は奈良県知事の認可を要することなく本件農地の所有権を有効に取得したものということができる。被告は農地につき、すでに賃借権その他の小作権が設定されている場合には譲受人がその小作人から小作地を取上げうるという条件が備つていない限り、同法第六条第三号は適用されるべきものではない旨主張するが、前記法律第六十四号農地調整法が同法第五条の例外の一として、同法第六条第三号の規定を設けたのは一方においてかような場合には、農地の潰滅を避けることができ、他方において土地使用の目的変更を理由として、農地の新所有者から同法第九条に基き、耕作者に対する農地賃貸借の解約申入れがなされることなどを防ぎ耕作者の地位の安定を期することができて、農業生産の維持増進を図る上に支障を生じないと考えたためにあると解せられるから前叙認定の如く原告が訴外庄田喜一郎をして、本件農地を引続き耕作せしめていたとしても原告において本件農地を取得する当時耕作の目的に供する意図を有していた以上原告は本件農地の所有権を有効に取得したということができるのである。従つて原告は本件買収処分の無効確認を求めるにつき法律上の利益がある。従つて被告の本案前の抗弁は何れもその理由がない。

よつて次に本案につき、按ずるに先づ本件農地の買収は原告の小作地保有面積を侵すものである旨の原告の主張につき、按ずるに成立に争いのない乙第一号証同第二号証の一、二同第三号証の一、二同第五号証の一、二同第十号証乃至第十三号証証人長谷川宇三郎(その証言の一部)同庄田一夫、同西川音次郎、同石井トシヱ、同河井清八の各証言を綜合すれば、原告の元所有の農地の内北葛城郡当麻村(元磐城村)八川(イ)二二六番田一反二十歩(ロ)二三七番田一反五歩(ハ)二三五番田一反一畝三歩(ニ)二五八番田五畝十七歩は何れも元訴外西川林一郎の所有であつたところ昭和五年十一月十七日原告の父である訴外長谷川宇三郎名義に所有権移転登記を受け原告は爾来引続き前所有者時代よりの小作人であつた(イ)の田地は訴外石井末太郎(ロ)乃至(ニ)の田地は訴外大塚繁雄をして小作せしめ来つたものであつて被告主張の如く右小作人である石井末太郎、大塚繁雄に夫々売渡したものでなかつたものであること(此点に関する証人長谷川宇三郎の証言はたやすく措信することが出来ない)又原告所有の(ホ)同村北角四八二番田一反十三歩の訴外西川万太郎の小作地(ヘ)同村彌宮谷一一六七番田四畝五歩の訴外西川良雄の小作地は夫々右各小作人に売渡したものでなく依然同人等をして小作せしめ来つたものであること(此点に関する右長谷川宇三郎の証言は又措信することが出来ない)従つて本件買収の当時原告は小作田地を一町四畝七歩を所有して居たところ数回に亘りその内四反八畝十二歩の買収を受け残余の小作地が五反五畝二十五歩となつたものであることが認められる。

而して奈良県に於ける小作地の保有面積は六反であることは当事者間に争のないところであるが分筆を避くる必要があるときは右面積を五反まで下げることが出来たことは昭和二十一年四月十日農林省告示第四十二号(昭和二十二年五月十四日同省告示第七十二号改正)に徴して明かである、然らば本件農地の買収は原告の小作地の保有面積を侵害する違法があるものということを得ない。

次に本件農地の買収に当り買収計画の公告をなさず又買収令書の交付或は之に代る公告をなさない違法がある旨の原告の主張につき按ずるに成立に争なき乙第五号証の一、二同第七号証の一、二証人河井清八、木村作司、西川幸一の各証言並に右証人河井清八、木村作司の各証言によつて成立を是認すべき乙第四号証の一、二作成者の名下の印影につき争がない故成立を是認すべき同第六号証の一、二を綜合すれば、昭和二十三年十月十一日訴外磐城村農地委員会に於て本件農地(一)につき、買収計画を定め同月十三日磐城村役場の掲示場において自作農創設特別措置法第三条による農地買収に関する件と題する公示をなし、同月十五日から同月二十五日までの期間右計画書を同村役場において縦覧に供したこと、又本件農地(二)についても昭和二十四年五月十四日その買収計画を定め同日右村役場掲示場において自作農創設特別措置法第三条による農地買収計画書(第十六号)と題する公示をなし、同月十六日より同月二十五日までの期間右計画書を同村役場において縦覧に供したこと、右各買収計画書には自創法第六条第五項規定の要件を記載してあつたこと並に被告は本件(一)の農地については昭和二十四年二月十日付買収令書、(二)の農地については同年七月二日付買収令書を発し夫々その当時前記農地委員会を経て、原告に右各買収令書を交付せんとしたるに原告は之が受領を拒んだので被告は同年六月二日付及び昭和二十五年四月二十八日付県報を以て買収令書の交付に代る公告をなしたことを認むるに足る、此点に関する証人長谷川宇三郎の証言はたやすく措信することが出来ない然らば原告の前記主張も亦採容することが出来ない。

してみると原告の各主張はいずれも理由がないことになるから原告の本件農地買収処分の無効確認を求める本訴請求は失当として棄却すべきものである。

よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 小林定雄 安井章 吉野衛)

(別紙省略)

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